American Stud Book 2001(2)

 アメリカン・スタッド・ブックのセクション III は用語集である。
 最初は American Stud Book そのものの規定で、次のようになっている。

American Stud Book
 このスタッドブックは、ジョッキークラブによって維持管理される登録、すなわち、アメリカ合衆国、プエルトリコ、カナダで生産される全てのサラブレッド、および、ジョッキークラブと国際スタッドブック委員会によって認められた国から、この国へ輸入される全てのサラブレッドの登録に関するものである」

 2番目は馬の年齢に関する規定で、 Foal ・ Suckling ・ Weanling ・ Yearling ・ Two-Year-Old の5つについて記載があり、それぞれの説明は以下の通り。

  Foal  
   いずれかの性別の、生れた最初の年の馬

  Suckling
   あらゆる性別の Foal で、まだ母馬の乳を飲んでいるもの

  Weanling
   あらゆる性別の Foal で、母馬から別れて以降のもの

  Yearling
    Colt, Filly または Gelding(注)で、生れて2年目のもの(2年目は
   生れた翌年の1月1日に開始する)
 (注)Colt, Filly, Gelding については別途性別の所に規定がある。

  Two-Year-Old
    Colt, Filly または Gelding で、生れて3年目のもの(3年目は
    Yearling の翌年1月1日に開始する)

 日本には当歳という言葉があった。年齢表記が変わって以降、何と呼んでいるのか分からないが、多分当歳はそのままで、次にいきなり2歳馬となっていたものを1歳馬とよんでいるのではないかと思う。
 そうであれば、Foal は当歳馬と以前と変わりが無く、逆に Yearling に 1 歳馬という言葉を当て、それ以降の馬については今後直訳が使える。
  Suckling は離乳前当歳、Weanling は離乳後当歳とでも呼ぶのだろう。

 3番目は、Breeding Practices (not approved by the Jockey Club)、直訳すると「馬産の実践(ジョッキークラブによって認められないもの)」で、 用語集というよりもルールのようでもある。
  1995 年版ではずばり 、Artificial Breeding「人工的な馬産」となっていた。
 バイオテクノロジーの進歩によって、微妙なものが出てくることを想定し、曖昧な言葉にして、むしろ適用範囲を広げたものと思われる。
 ただし、その中身は同じで以下の2つである。

  Artificial Insemination「人工受精」
   物理的に種牡馬が牝馬に ( 交尾のため ) 乗ることなく、繁殖牝馬が受胎
   (妊娠する)ことを目的として、繁殖牝馬の生殖器官に精液を注入するプロセス

  Embryo Transfer (Transplants) 「胚移転(移植)」
   発育中の胚または未受精の卵子を元の母親から取り出し、子馬を産ませる
   ことを目的として、懐胎期間のある部分を受け持つ母馬の子宮に移植する
   方法

 おそらくは近いうちにクローンの問題も掲載されるのであろうか。
 あるいは、いずれにしても出産するための母体が必要であるから、この項目だけで足りるのかもしれないが、議論だけはされているものと思われる。
 しかし、受胎促進のための薬などもありそうだし、ドーピングと並んで難しい分野になってきていることは間違い無いだろう。

 次は、Breeding(馬産)に関する用語である。以下 11 種 12 の言葉が上げられている。

  Bred (Mated)「ブレッド(交配馬)」
   物理的な繁殖(交配)の行為が行われたあらゆる牝馬(Filly or Mare)

  Bred (Area Foaled)「ブレッド(地域産馬)」
   ブレッドという言葉は、子馬が生れた場所を表わす時にも使われる。すな
   わち、ケンタッキー産馬、ニューヨーク産馬など。

  Breeder「生産者」
   生産者とは、出産時に母馬がリースされていたり、出生馬の持ち分契約が
   あるといったことがなければ、出産時の母馬の所有者である。
   そのような(リースや契約がある)場合は、契約で特定された人(人達)
   が生産者である。

  Stallion「種牡馬」
   子馬を生産するために使われる牡馬(Horse)

  Sire「父馬」
   かつて子馬を生産するために使われたか、あるいは現在使われている牡馬
   (Horse)

  Broodmare「繁殖牝馬」
   子馬を生産するために使われる牝馬(Filly or Mare)

  Dam「母馬」
   かつて子馬を生産するために使われたか、あるいは現在使われている牝馬
   (Filly or Mare)

  Maiden「メイドン・処女」
   交配が行われたことの無い牝馬(Filly or Mare)

  In Foal (Pregnant) Broodmare「子を宿している(妊娠)繁殖牝馬」
   交配され、受胎し、子を宿している(妊娠)牝馬 (Filly or Mare)

  Aborted「流産」
   交配後 42 日、あるいはそれ以降の検査において、受胎が確認されながら、
   お腹の子を失った牝馬(Filly or Mare)、あるいは、お腹の子が流産し
   たことが観察された牝馬(Filly or Mare)に対して使われる言葉

  Barren (Not Pregnant)「不妊(不受胎)」
   メイドンを除いて、交配されながら、前回の繁殖時期に受胎しなかった牝
   馬(Filly or Mare)に対して使われる言葉

  Breeding (Mating)「ブリーディング(交配)」
   種牡馬が牝馬(Filly or Mare)に乗りかかって、生殖器官に挿入射精す
   る物理的な行為

 牝馬はしばしば、 Filly or Mare と書かれているが、種牡馬になると牡馬は Horse としか書かれていない。
  Colt 、Horse 、Mare 、Filly については、性別のところに説明が出てくる。次回はその性別から。