2001 年 BC at Belmont Park 前夜 | |
2001 年アメリカのブリーダーズカップは、9 月 11 日のテロの記憶も生々しいニューヨーク市のベルモント競馬場で行われた。 毎年日本からもツアーを組んで沢山ファンが訪れるレースではあるが、今年はハイジャックによるアタックに加えて、炭疽菌 Anthrax によるバイオテロが明らかとなり、ほとんどのツアーがキャンセルされたようだ。 私も競馬を通じて知り合った多くの知人たちとの再会を楽しみにしていたが、次々にキャンセルの連絡があり、唯一最後に残ったのは「常連」氏ご夫妻だけであった。さすがに常連の名に恥じず、何がなんでもやって来られるのも凄いが、日程が、金曜日到着、日曜日帰国で、時間がもったいないから空港近くにホテルを取り、金曜日着いた日もベルモント、翌日BC観戦してそのまま帰るという徹底振りは、驚嘆すべきものがある。それだけ本業がお忙しいということであるが。 今回は自分で手配したチケットが何故か手に入らず、常連氏経由で手にいれることになった。実はこれは、昨年の BC にも登場したK氏ご夫妻がお取りになったもので、氏は日本で外国産馬の馬主でもあるので、生産関係の方からお取りになったらしい。ところが、肝心の御本人が秋になって手術をされ、ドクターストップの上、このテロ騒ぎで遂に断念、馬券を常連氏に託しての幻の参戦となってしまわれた。 チケットは元々 6 枚あったのだが、使うのが 3 人となってしまったので、残りを地元にいる私の知人に割り振ることにした。 丁度以前いた会社の同期が3人マンハッタンで単身赴任をしており、これに声を掛けたら、3人とも競馬は全くの素人ながら、それならば是非ということで参加が決まった。しかし内 1 人に用事が出来てしまい、直前でドロップして結局は 1 枚余ったままとなってしまったが、これは致し方のないところ。 その2人は、1 人は関西出身のおとなしくて真面目な経理マン、少々頑固な面もあるが、そういうところが如何にも経理向きというと怒られるか。以前にイギリスに駐在していた時、トムというニックネームを貰って、分かりやすくて気にって入たのだが、実際には Peeping Tom (ピーピング・トム、出歯亀のこと)と陰で言われていることが判明、アメリカではトムと呼ばせないそうだ。今回スプリントにズバリ Peeping Tom という馬が出ており、この馬券を本人が買うかどうか注目されるところ。 もう 1 人は関東出身の粋な江戸っ子。メガネの種類に依っては、古舘伊知郎そっくりになる。しゃべりは古舘ほど過激ではないが、それでもしゃべり出すと止まらない。競馬はほとんど初めてに近いが、そこは粋な遊び人のこと、自分なりにそつなくこなす要領を備えており、多分終わって帰る頃には、もう昔からの競馬ファンのような顔をしていることだろう。 さて、BC 前日、常連氏が空港にお着きになるのを出迎えて、ホテルに向かうも時間が早すぎてチェックイン出来ず、では、というのでベルモントに直行した。 平日ということもあり、空いていて、テラスで食事をしながら観戦、それでも BC あぶれ組みが参加するグレードレースが 5 つも組まれていて、予行演習には最適であった。 馬券の収支は、勝てなかったが大負けもしなかった程度であるが、この日最終レースに、何と以前の持ち馬で、昨年のチャーチルダウンズの時にご紹介した Golden Nocolas が出ていた。 今年 3 月にクレームされ、それ以降 5 回走って 1 勝を加えている。前走 8 月にモンマウスで勝ち、今回はそれ以来、どうやらその間に去勢手術を施したようである。人気はそこそこであったが、直線でぱったり止まってしまい、最後は 10 頭立てブービーで入線だった。 それにしても偶然とはいえ、何かを暗示しているような感じがした。 Goldenn Nicoplas は昨年の秋初め頃、BC クラシックの今年の本命 Apptitude と走っているのである。さてこの暗示がなんであるのかは、明日分かることになるのだが。 競馬場を出て、金曜夜の混んだ道をマンハッタンに向かい、今評判のインドネシア料理店で「トム」と「粋な遊び人」と合流、談笑して翌日の段取りを決め、2人にキップを渡して前夜祭終了、ようやくホテルにチェックインした。 今回私は地元ではあるが、当日の交通上のリスクを考えて同じホテルに一泊することにした。そしてその夜、私は密かに秘策を練ったのである。馬券で負けないようにする、いや大きく勝つにはどうしたら良いか。そこでだいぶ以前に日本でやっていた資金分割方式を少し捻って適用するべく、次のように決定した。 1)総額300ドルで固定、単勝関係100ドル、連勝関係200ドルに分け る。もしも全敗すると300ドルやられることになる。 2)単勝はまず、Daily Double 前半(1-2 レース)に 2 ドル、後半(9-10 レース)にも 2 ドルとし、もし前半 2 ドルが当たれば後半に転がす。転が した場合は、例え外れても、後半の 2 ドルを使わなくて済むので、負けは 少し押さえられる。これを押し出し方式と称する。 次に Pick 6 に 64 ドル充てる。これは、単価が 2 ドルなので、組み合 わせは 32 通り、6 レース中 1 レースだけは 1 頭に絞り、残りは 2 頭づ つ選ぶという計算である。 残りは 32 ドルあり、これはローリング Pick 3 を 4 ドルづつ 8 レース 行う。すなわち1レースの Pick3(1-3 レース)から 8 レースの Pick3(8 -10 レース)まで買おうというものだが、もしも 1 レースでも当たれば次 の Pick3 は買わない、すなわち押し出し方式をここでも適用する。 これだと何処かで 3 レース連続当たれば確実に Pick3 を取れるし、たと えそうでなくても当たったレース数 x4 ドルづつ押し出して、その分負けを 少なく出来る。 3)連勝式は Pick3 と同じような方式だが、さらに賭け金に傾斜を付ける。 1-2-3-4 方式と呼ばれるもので、10 レースを均等配分せず、単価 1 を 4 回、2 を 3 回、3 を 2 回、4 を 1 回賭ける。合計が 20 になるので、具 体的に 200 ドルを分配すると、最初の 4 レースに 10 ドルづつ、次の 3 レースに 20 ドルづつ、次の 2 レースに 30 ドルづつ、最後のレースには 40 ドル資金配分する。そして、これも当ると次のレースに転がして押し出 していく。 こうしていくと、金額の大きい所から順番に押し出されていくので、どん なに安い配当でも、一つ当たれば負ける金額をドンドン減らせるので、無理 に高い配当を狙うこともない。 ちなみに、最終レースを除けば、一つでも当たれば 40 ドル押し出される ので、どこかのレースで 160 ドル当たった時に転がさず確保してしまえば、 その日の連勝方式分の負けはゼロになる計算。 転がしてさらにもう一度当たった時は、押し出し金額が 70 ドルになるの で、この時は配当が 130 ドルと減っても良いことになる。 また、最終だけ当たった時でも 40 ドル元手で 200 ドルになればよいの だから、5 倍の 1 点勝負なども出来、要するに最後まで全敗で来ていても 大穴でなくチャラに出来るという手段を確保しておくことで、精神的な余裕 をもって無理筋に行かないようにすることが最大のメリットなのである。 この方式では、Pick 3 が一つでもヒットすれば配当が 100 ドル位は軽く、元は簡単に取れる。そうでなくとも全く一つも当たらないことはないだろうから、Pick6 の 64 ドルは捨てたとしても、負けはせいぜい 70 ドル位だろうと計算できる。 もう一つの連勝式でも、最初のうちは資金が 10 ドルしかないので 3 連単 Trifecta などは手を出さず、連単 Exacta に集中しておいて、当たれば次のレースで Trifecta や場合によって 4 連単 Superfecta など高い配当の馬券を買うことを考える。 もちろん連単の購入単価を増やすのも一つの方法ではあるが、簡単に何千ドルという配当が出てしまうのを目の前で見ていると、やはり誘惑にかられるし、Exacta が当たれば Trifecta にはもう 1 頭だけなのだから、 Exacta で元手を何とか確保しつつ、どこかで一発大物を引っかけて、大きな利益が得られるようにしたい。 それを可能にするのがこのやり方で、まさに防御と攻撃を兼ね備えた理想的な方式である、と少なくとも前日の時点で、本人はそう思い込んでワクワクしている。 ベルモント競馬場の窓口は、馬券の販売が 2 ドル単位だが、機械で買えば 1 ドル単位で買えるので、着いたら早速 300 ドル分の機械用の券 Voucher を買って、断じてその範囲でこの資金計画に則って購入していき、帰りには 2 ― 3 千ドル持って帰る予定である。 さて、次回以降この資金計画が如何なる結果をもたらすのか、常連氏やビギナー達の成績や如何に。既に私の事前予想もレース結果もご存知であろうが、レースを追って、さらには勝ち馬の馬名などにも触れながら見ていくことにしよう。 |