第4回 ライバル・・・石崎隆之と的場文男

 いま南関東のリーディングジョッキーは、二人の激しい首位争いが続いている。10月5日終了時点で、石崎隆之224勝、的場文男220勝。的場文男が地元の大井でリードし、それを船橋、川崎、そして浦和で、石崎隆之が追いつき、追い越すというパターン。
 この抜きつ抜かれつが、もう三ヶ月ほども繰り返された。こういう接戦は筆者もちょっと記憶にない。ここ数年はずっと石崎隆之の一人勝ちで、その前は佐々木竹見、高橋三郎、さらに桑島孝春の時代があった。
 おおむね誰かが独走して、年の後半は無風という状態でリーディングを制している。

 石崎隆之については、JRAオンリーのファンの方にも、さして説明がいらないだろう。現在11年連続南関東リーディング、NRA最優秀騎手に10年連続輝いている。4年前、阪神ワールドスーパージョッキーでも、トウカイサイレンスなど、絶妙の騎乗をみせ、総合優勝を果たしている。
 彼を語るほめ言葉もすでに全国区で定着した。レースを読む冷静な判断、馬を動かす確かな技術。深いダートコースで、しかも性能の悪い馬に乗って、驚くほど緻密で計算ずくの競馬をする。

 ただ、反面彼は、取材などでは実に素直な表現をする人で、そこが愛すべき部分だといつも思う。初めてリーディングを取った平成元年、暮れにゆっくり話す機会があった。
「リーディング、狙ってたの?」という質問に、こっくり嬉しそうにうなずいた。
「ひと月20勝、かける12で240勝。それを目標にしてね。ウチのトイレに紙を張って、"正"の字で毎日書き込んだりして…」
 なるほど、南関東リーディングはだいたいその数字で達成できる。実際今年にしても、このまま順調ならまず250勝は確実だろう。
 ところがそこに的場文男というライバルが現われた。一転、とてつもなく高いレベルの争いに変わっている。

 的場文男は、これまで南関東リーディング争いに、少なくとも表面上はあまり執着を示さなかった。
 大井は昔からいうところの”モンロー主義”で、自分のテリトリーを最上絶対と思ってきた。JRAがセリーグなら、大井をパリーグ、現実はともかく、そういう認識。だから、その No.1である的場文男は、いつの間にかハングリー精神が眠っていた、いやおそらく眠らされていたのだろう。大井のエースならそれでいいや・・・。
 しかし今年になって、彼は一念発起した。理由はわからない。何かが彼の心の中で弾けたのだろう。他3場、とりわけ目と鼻の先である川崎で勝ちまくり、結果、強いコネクションを作った。循環と回転。リーディングジョッキーには、もちろんこれが不可欠である。

 的場文男は、石崎隆之と性格、騎乗法が対照的で面白い。
 石崎は、相手の動きを見ながらカウンターを狙うボクサー、対して的場は、とにかく強引に攻めて攻めるファイター。だから、成績欄に”後方まま”が続いた馬が、彼に乗り替わって、いきなり”逃げる”ことが珍しくない。
 ファンも、それを期待して馬券を買う。わかりやすい、わかりやすすぎるから筆者など、ちょっと引いてしまうのだが、結果はというと、おおむね”素直が一番”だったりする。いずれにせよ、今の的場文男には、走らない馬を動かす、動いたら粘らせる、そんなオーラのようなものを感じられる。

 いわゆるライバル意識は、むしろ石崎発=的場の方が強いらしい。的場の一種ガムシャラな騎乗に”心の平静”を乱されるのだろう。的場の”意表を突いた逃げ”に、石崎の”追い込み馬”が競りかけていくシーンを何度か見た。

 暮れの阪神競馬場「ワールドスーパージョッキーズ」。その挑戦権も二人の激戦を呼ぶ引き金らしい。
 石崎隆之は毎年(東西隔年だから一年置きか)、これをひとつの目標に置いている。自分の技術がアピールできること。一流の中で、気持ちよくレースができること。さまざま精神面でも学べること(取材のたび彼は、岡部騎手を盛んにほめる)。
 むろんギャランティも魅力だし、何よりその一週間、家族帯同で栗東へ行き、旅行気分を楽しめるのが嬉しいとは本人から聞いた。何か、いじらしいような気もする。それだけ地方ジョッキーの毎日は過酷なのだ。

 がしかし、そこで的場文騎手が、新たな攻勢に出た。いずれにせよ、その選考基準は、はっきりさせるべきだろう。竹内康光さんからは、「10月4日時点の勝ち鞍で決定」と聞いたが、一般マスコミには、まだ報道もない。獲得賞金にしろ、統一Gの実績にしろ、最初から決めがない以上、当事者のストレスがたまる。

          ☆                  ☆

 10月9日(祝)、盛岡競馬場の「南部杯」は統一GI、ダートマイラー決定戦かどうかはともかく、いい顔ぶれが集まった。筆者は当日、浦和競馬場(開催中)で場外馬券を購入、かつレース観戦する予定。

 メイセイオペラは、浅屈腱炎を発症、近く正式に引退を表明するらしい。岩手チャンピオン、むろんそればかりではなく、日本のダート王、そう呼べる一頭。

 ただ筆者の持論とすると、競走馬の”旬”は、どう長くても2年、普通は1年半。比較的消耗の少ないダートでも、やはり例外ではない。ライブリマウントしかり、アブクマポーロしかり。ロジータなどは1年間、自分のテリトリーを走り抜け、そこですべてを完了している。牝馬だから、(関係ナイワかどうか)踏ん張れるものがあるのかどうか。ファストフレンドは休養明け。少し気にならないでもない。

    ◎ゴールドティアラ
    ○ファストフレンド
    ▲ウイングアロー
    △インテリパワー

 盛岡千六は、長い直線を2度走り、しかも最後に坂がある。府中と同じ、砂の重さを含めれば、同等以上のタフさを感じる。
 本来は、総合力に優るファストフレンドで中心は動かない。ただし負けるとすれば、やはり休養による体調の揺れ、集中力の危うさということだろう。彼女は昨年4月、船橋マリーンカップを制して全国入り、以後ずっと緊張感のある戦いを強いられた。あるいはここで、お疲れ様もあるかどうか。次回またその成績、反省は書かせていただこうと思う。