1989 年10月29日 東京10R 天皇賞(秋) 2000m 馬番 1 カイラスアモン 牡6 58 竹原啓二 2 レジェンドテイオー 牡7 58 郷原洋行 3 ミスターシクレノン 牡5 58 松永幹夫 4 オグリキャップ 牡5 58 南井克己 5 メジロアルダン 牡5 58 岡部幸雄 6 キリパワー 牡5 58 大塚栄三郎 7 イナリワン 牡6 58 柴田政人 8 ランニングパワー 牡7 58 菅原泰夫 9 ディクターランド 牡5 58 菅谷正己 10 ウインドミル 牡5 58 蛯沢誠治 11 ヤエノムテキ 牡5 58 西浦勝一 12 フレッシュボイス 牡7 58 田原成貴 13 ダイゴウシュール 牡5 58 大崎昭一 14 スーパークリーク 牡5 58 武 豊 ------------------------------------------------------------------------ (二)消費税廃止論者の赤い気炎 去年の競馬は、タマモクロスとオグリキャップの二頭の芦毛のおかげで、おおいに盛り上がったという人がいますが、ワタシはそうは思いません。なぜならば、どうもあの二頭には人間の臭いが強すぎるからです。 タマモクロスは、生産牧場が倒産して人手に渡っており、もう少し早く彼が活躍していれば回避できたのではないか、といわれていますし、オグリキャップは、中央競馬で走らせるために高額で転売したところ、新しい馬主が脱税容疑をかけられているそうで、どちらも金にまつわる話が多すぎるのです。 そんな話を聞いて以来、二頭によるレースがどんなに白熱しても、ワタシには人間の欲望を背負い込んでいるように見えて、どうにも白々しい気分になってしまうのです。 今年に入ると、タマモクロスがいなくなり、オグリキャップも故障して、ようやく人間臭くないサラブレッドの物語が見られると楽しみにしていたのに、秋になると「白い怪物」オグリキャップは、その名にふさわしく復活してきました。 しかも新聞の報道によれば、オールカマー、毎日王冠と、トライアルを二つ勝っただけでは満足せずに、天皇賞、マイルチャンピオン、ジャパンカップ、有馬記念と、投網をかけるような賞金獲得作戦に出ているそうです。欧米では、このようなローテーションは珍しくはない、などと弁解してようですが、何をいっているのでしょうね、本当に。 間接税を導入しているヨーロッパ諸国の多くは、インヴォイス方式を採用して、日常品には税金がかからない仕組みになっているのですから、一律に3%などと投網をかけるような………。あれ、ワタシのほうこそ何をいっているのでしょう。 そうだわ。「見直し」ではなく、消費税は「廃止」なのです。 ここで、シュプレヒコールを行いたいと思います。 オグリキャップの消費税型ローテーションを許さないぞお! オグリキャップを破って、消費税を廃止するぞお! えっ、誰が勝つかって? もちろんユタカ君が乗るスーパークリークよ。このあいだはハナだけ負けたから、今度はきっとハナを伸ばす練習をしてきたはずです。 ------------------------------------------------------------------------ (三)近鉄派競馬ファンの悩み 近鉄バファローズ、九年ぶりの優勝バンザーイ。バンザーイ。もうひとつバンザーイ。 熱パを制した原動力は、西武との最後のダブルヘッダーにおけるブライアントの四連発、仰木監督のパンチパーマ、リベラの右ストレート、阿波野の力投等々あるけれど、ロッテの平沼が、清原に与えたデッドボールを忘れてはいけない。 ぶつけられた清原が怒って、バットを投げつけ、必殺のジャンピング・ニーアタックを浴びせたあの事件。清原の奴、マスコミの非難に屈し、それからは身体の近くに投げられても、恫喝するどころか、睨み返すことさえできなくなってしまった。 これを見てとった各球団の投手は、安心して彼の顔の付近に投げ、そのために最後の十試合、さしもの清原のバットも沈黙し、わがバファローズに優勝がもたらされたというわけだよ。 うん。近鉄バファローズ、優勝バンザーイ、だよ。 でもだね、正直にいうと、優勝するとも思っていなかったので、それほど気にしていなかったけど、じつは困った問題が持ち上がったんだ。 天皇賞の日が、日本シリーズの第七戦と重なってしまったのだ。 前回優勝したのが一九八〇年、プリティキャストが逃げ切った年で、そのころは天皇賞のほうが十一月下旬に行われていたので、心配はなかったが、今年はそうはいかない。 第七戦では、決着がついているかどうか分からず、もしかしたらその日は、わが近鉄バファローズが日本一になる日かもしれない。 なにしろ十二球団で、日本一になっていないのは近鉄だけなので、そうなったら、藤井寺にいくべきか、府中にいくべきか、迷うだろうね。 天皇賞だって豪華なメンバーが揃って見逃しがたいし、第七戦の切符はいちおう手に入れたけど、困ったものだ。 これが毎年日本シリーズに出場しているライオンズ・ファンならば、迷うことなく府中にいくのだろうけど、こちらは何といっても九年ぶりだからなあ。 解決策はただひとつ。 三勝三敗ならば、その日は雨が降ればいいんだ。しかも半端な雨ではなくて、藤井寺も府中も、ともにしっかりと雨が降ればいいんだ。そうすれば安心して府中の競馬場にいける。そして、安心してメジロのアルダンを買うことができる。 なぜかって? それはね、母馬のヒリュウが、重馬場を得意としたからだよ。平地のレースでは三勝しているが、馬場状態は、重、不良、不良と、雨が大好きだったのだ。雨さえ降れば、メジロアルダンで間違いはないだろう。 そして翌日は、会社をサボって藤井寺球場にいき、休養十分の阿波野で完封し、近鉄優勝で万々歳だ。 そうだ今日から、テルテル坊主を逆さにして軒から吊し、雨乞いをすることにしよう。毎朝しているシットアップ五十回の前に、その逆さテルテル坊主の下にいき、柏手を打ち、次の呪文を三度唱えよう。振りを入れるかどうかは、各自の好きにすればいい。 雨々降れ降れ、もっと降れ。私のバファローズ、日本一。 雨々降れ降れ、もっと降れ。私のアルダン、日本一。 これで大丈夫だろう。その日は間違いなく、全国的に大雨だ。 (この章続く) |
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