American Stud Book 2001(7)
    規則(6)出生馬の命名(前半)

 今回は馬名に関する規定で、長さからすれば 1 回で足りそうだったが、自分のコメントが長くなるので、これは 2 回に分ける事とした。

6:出生馬の命名

  A. 名前は、出生登録用紙、馬名申請用紙、またはジョッキークラブインタラ
  クティヴで申請出来る。
   名前は希望順に記載の事。
   名前は(他に使われていなくて)有効かどうかとここに記載される規則に
  適合しているかで判断される。
   名前の申請は電話では受け付けない。
   名前が外国語で申請されるときは、英語の訳も添えてジョッキークラブに
  届ける事。
   明確な意味を持たない名前の時は「新造語 Coined」または「合成語 made
   -up」ということを明記した説明をつけること。
   合衆国・プエルトリコ・カナダ生れで現在他の国にいる馬も、当該国のス
  タッドブックの管轄者を通してジョッキークラブに申請の事。

  B. 名前の申請が 2 歳の 2 月 1 日迄になされながら申請した名前が却下さ
  れた場合は、再申請の費用は不要である。
   しかし有効な申請が 2 歳の 2 月 1 日までになされなかった場合は、名
  前の申請費用が必要である。( 料金表参照 )

  C. 申請が受理された「登録名」は、受理された日から 1 年(365 日)以内
  に使用されなければならない。
   登録名は、登録事務所がその名前と特定の馬を結び付けるという書面の申
  請通知を受取るまでは使用する事は出来ない。
   もしも登録名が登録後 1 年間使用されなければ、その名前は全ての馬に
  開放される。
   出生馬には然るべき登録料がかかる(料金表参照)

  D. 出生馬の名前は、その馬が最初にレースをする前であれば、いつでも変更
  しても良い。
   通常は、最初のレースで走るか、繁殖目的で活動し始めてからは、名前の
  変更が許されない。
   しかしながら、最初のレースに使われた以降に変更が余儀なくされた場合
  には、名前の変更後 3 レースの間は、以前の名前と新らしい名前両方を使
  わなければならない。
   所定の費用(料金表参照)と出生登録証明書は、必ず名前の変更に伴う申
  請には添付されていなければならない

  E. 10 歳以上の馬の名前は、下記規則 6(f) で除外されておらず、しかも最
  近の 5 年間でレースか繁殖に使われていなければ、使用してもよい。
   セン馬と牡馬(古馬 horses)の名前で、レースにも繁殖にも使われてい
  ない場合は、その馬の死亡届が出されてから 5 年過ぎていれば、使用して
  もよい。

 以上が名前に関する規定の前半部分で、後半は除外規定、すなわち付けてはいけない名前についての記述である。
 それについては次回詳しく見ることになる。
  95 年版との比較では、オンラインで登録が出来るようになったこと以外は、変更がない。

 さて、この名前の登録であるが、日本と大きく違うのは、出生馬に名前が付けられるということ。
 日本の場合は、JRAやNRAが別に管理して、出走目的で名前がつけられるということが前提で、繁殖に上がったときには、さらに軽種馬協会での登録と複雑縦割りである。

 アメリカの場合でも、2 歳の 1 月までに申請すれば良いので、事実上は日本の場合同様、出走前提ではないか、という意見もあろうが、考え方は全く違う。
 これは歴史的なものも含めて、日本の競馬というものがどういうもので、どういう考え方であるかを、無言のうちに示していると言えるだろう。
 日本ではレースに出ることが絶対なのである。

 ここで馬名論を始めてしまうと、本題から外れてしまうので、またいずれの機会にか触れることにするが、こうした基本的な考えの差が、名前の付け方に多少は影響しているのではないかと思われる。

 ちなみに、ユニオン・オーナーズ・クラブの会報「マイホース」 8 月号によれば、荻伏町の牧場で、父エイシンサンディ、母エイシンサンデーという子供が誕生したとある。
 母親は 94 年 9 月に日本軽種馬登録協会で繁殖登録(多分競走馬登録なし)、父は 95 年にJRAに競走馬登録されたためだそうだ。
  2002 年 1 月からは、競走馬・繁殖馬ともに日本軽種馬登録協会で 1 本化して行うことが決定しており、来年以降に登録される馬には、こうしたことは起こらないということである。

 ところで、北米産の馬は全て、最終的に北米のジョッキークラブに名前が届けられる(現地の所轄団体経由)というのは知らなかった。
 これは、日本はどうしているのだろう。レースの所轄団体が登録事務をしていた関係からすれば、以前は仮にこうした例があっても、日本には受け皿がなかったので、連絡が来ても放置された可能性はある。
 今後はさて、どうなるのだろうか、これもある意味で興味深いポイントである。

 名前の意味は、現在日本でも登録に際してスペル等を届け出るようになっているので、それぞれの所に出向いて調べれば、以前よりは意味が分かるようになっているだろう。
 但し、わりと簡単な書き方のようなので、もう一歩突っ込んで、何故? いわれは?、という部分は、これを見ただけでは物足りないであろうと想像する。
 合成語の表記で、「Coined」と「Made-up」という二つの表現があり、一応 Coined のほうを、父と母の組み合わせによる合成新語、Made-up のほうを、「(適当に)でっち上げた思い付き」という解釈にしたが、実際にはそこまで厳密に違う使い方ではないと思う。

 名前の変更と言うのは、実際に出会ったことがないので、変更後 3 レースは新旧両名併記する規則があることは知らなかった。
 日本ではどうなっているのだろうか。確かウイナーズサークルが、以前はウイナーサークルだったと聞いたことがあるが、最初のレースの出走前だったかも知れない。
 そうであれば、この規則を当てはめても両名併記ではないことになる。

  E の 10 歳以上の馬云々という表現は、なぜこんな分かり難い表現なのか良く分からない。牝馬でも死亡届後 5 年で良いのではないだろうか。