第9回 視界良好

 毎日予想をさせていただいている立場からは、あまり適当でない発言なのかもしれないが、ひとまず正直に書く。
 私の場合、競馬場に出かけてレースを見る、そのスタンスは「ひいき」であり、「応援」であることが多い。「推理」とか「収支」より、「感情」と「自己満足」が優先する。好きな馬が勝てば、よーしとコブシなど握りしめ、そうでない馬が勝つと、横を向いて舌打ちする。ダメだなこりゃ。客観性がみじんもなく予想者失格。我ながら単純すぎてどうしようもない。
 まあしかし、JRA対地方、ダート統一Gが進み、そういう気持ちを高揚させるには、昨今いい時代にはなっている。12 月 13 日、「全日本3歳優駿」はそんな競馬を見せてもらった。

 全日本3歳優駿(川崎競馬場・ダート1600メートル・良・統一GII)
 1:△トーシンブリザード  54 石崎  1分 42 秒6
 2:◎ロイヤルエンデバー  54 今野    鼻
 3:△フレアリングマズル  54 宮崎    3
 4:…マイネルジャパン   54 四位     1/2
 5:▲ムガムチュウ     54 藤田     3/4
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 6:…マイネルエーレ    54 横山典
 7:○コスモリアライズ   54 田中勝
 8:△レタセモア      54 安藤勝

 現実にはコブシを握りしめるほどの結果にはならなかった。期待のロイヤルエンデバーが鼻差敗れてしまったし、馬連 24 倍、馬単 70 倍余の配当も、まずい馬券センスのおかげで、情けなくとり逃がした。
 嬉しさも中くらい、いや、同僚・飯田正美がしばしば使う表現でいえば、せいぜい”小威張り”くらいのものか。
 ただしかし、今回はJRA絶対のムードが漂う中、わが南関東馬がワンツーを決めたことに価値がある。まあ、そう思いたいだけかもしれないが。
 いずれにせよこの「3歳優駿」は、統一G指定後3年間で、アグネスワールド、アグネスデジタル、超A級馬を輩出している。何とかそれにあやかりたい。

 レースは、ロイヤルエンデバーが少しカカったような逃げ。千通過 63 秒9とかなり遅い。ただ、後続がスローにハメられたかというと、そうでもなく、ムガムチュウ・藤田、マイネルエーレ・横山の手綱も、道中激しく動いている。
 おそらく、馬場適性の問題も大きいだろう。彼らはやはり、JRA流の軽い砂でないと、うまくエンジンがかからない。
 そうこうしているうちに 4 コーナー。石崎隆之は、結局巧みとしかいいようがない。エンデバーの外に素早く馬体を合わせ、最後の最後で競り勝った。トーシンブリザードは父デュラブ。しかし距離延長にも見事に対応して3連勝。母の父ブレイブェストローマン。馬鹿にできない馬とも思う。体つきは脚がスラリと長く、快速型のそれではない。

 ロイヤルエンデバーは、父ラムタラ、母ジェフォリー。イシノサンデーの異父弟である。「もきち倶楽部」では筆者の敬愛する伊与田翔氏のPOG持ち馬。
 実際は 8 月に、川崎・鈴木敏厩舎からデビューと聞いて、愕然とした。どうして自分が取らなかったのか・・・。しかしまあ、ずっと地方競馬にも心を寄せていた伊与田さんならいいよね。
 いい訳めくが私は、深夜 11 時開始の「もきちドラフト」は、例年、酩酊というか、睡魔が押し寄せて、いつもモウロー状態。関係ないか。同馬がなぜ地方デビューかは、オーナーが、自身JRA登録をとれなかった(パチンコ屋さんらしい)とのこと。いずれにせよラムタラ産駒。素晴らしい馬が現われた。

 ただ、ロイヤルエンデバーについてもう少し書くと、これはいうところの”重いタイプ”という気もする。今日のパドック、返し馬。改めてじっくり見た。
 まず、前も後ろも、馬体がガッシリ立派すぎること。ダクからキャンター、首をうまく使えない走法(素人判断)で、たぶん、馬がかなりレースとか勝負を覚えてこないと、今後ゴール寸前チョイ負けが多くなるとイメージする。
 ラムタラの仔は、そういう傾向があるのかどうか。私など、ここで本当は”専門家”の声を聞きたい。かつて「競馬通信」では、須田修さんなどが、馬体診断をやっていらした。乱暴な意見を承知で書けば、馬はやはり、血統より個体と思う。その”個体”を、どこでどう見たらいいものか。

 トーシンブリザード、ロイヤルエンデバーとも、来春はひとまず「大井」目標だと聞いた。2月「京浜盃」あたりをステップに、クラシックを狙う。前者にはスピードと競馬センス。後者には馬力とパワー。
 いつのころからか、深々と冷え切っている競馬界で、馬自身はもちろん頑張っているのだけれど。